くらた内科クリニック

横浜市 鶴見区 内科 循環器科 呼吸器科 アレルギー科 くらた内科クリニック

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ドクター本多のコラム

コラムNo.3

満天の星、こぼれる星々

 前回、星の話をしたので星繋がりで書いてみます。
いつだったか、日本の若者が無寄港単独ヨット世界一周を果たしたとき(名を失念して大変失礼なのですが)太平洋のどまんなかで凪(なぎ)に遭遇したときの話がとても印象的でした。あの広大な太平洋が凪になると海面がなんと波ひとつない「鏡」になってしまうというのです。
私は富士五湖や尾瀬沼で風が無く鏡面となった湖沼を見たことはありますが、確かに背景を映して美しいのですが海でそれが起きたらどうなるのか想像もできませんでした。
凪となるとヨットはピクリとも動きません、次の風まで待つしかないのです(無動力の約束でしたから)。
そして、彼の話は仰天の世界に連れていってくれました。
夜になると大満天を埋め尽くす星々の出現、そしてそれらがそっくり海面に映っている。
鏡ですから深さまでも海の底に星があるようです。舳先に寝ていると夜空も海の底も星で一杯だったその時、自分は宇宙の真ん中にいる錯覚におそわれたといいます。でも、錯覚ではないんですよね!

 私も、漆黒の空を溢れるような星々がところ狭しと浮かんでいる世界を見たことがあります。場所は富山県、立山連峰の富山側、すでに半世紀も前の話となりますが現在は硫黄噴出量の増加のため立ち入り禁止となってしまった名勝「地獄谷」のどまん中でした。
そこに、金沢大学医学部山岳部の山岳診療所があったのです(現在閉鎖中)。室堂(むろどう)バスターミナル診療所が内科専門だったこともあり、地獄谷診療所は「切った張った」の外科系診療所として有名でした。
また24時間往診可能ということで、近隣のヒュッテからも信頼されていたのです。
学生は3年目から6年生まで対象に1~2週間単位でこの診療小屋に入り、掃除・洗濯、診療所朝の準備(消毒や滅菌)、さらに飯炊きに食品の調達、発電機用ガソリン調達と仕事は山ほどありました。先輩の命令一下、往診にはガスボンベを持って登山することもあったのです。すごく面白い経験でした。
無論、給料などは出ませんがどこからか調達される飯を炊けば食べることはできました。
トイレは外に増設されておりましたが、いったい廃棄はどうしていたのでしょう?
自然に還るのを待っていたのでしょうか?なにしろ地獄谷ですから。

 あたりの地面は硫黄色に満ち富山から吹いてくる風が、山の谷間を抜けて硫黄の滞留をさらっていってくれていたのです。あちこちには、3~5メートル直径ほどの深さもわからない沼のような池があり、泥湯でほどよく熱く風呂には最適でした。
もちろん観光客、登山客からは丸見えで、まさか昼に入るわけにはいきません。

 診療所の小屋には常時数人のメンバーがおりましたから、真夜中3人ずつクールを組み懐中電灯で照らしながらその完全露天風呂に近づくと、さっさとすっぱだかになり、泥の湯に足をすくわれないよう静かに入りました。先輩からの長い経験で、どこの穴湯が深さが安全かわかっており安心して体を沈めるのですが、尻を床に着けると泥が肛門にはいってきそうで尻を浮かしてはいらなければなりません。

 そして空を見上げると、そこはもう信じられない満天の星でした。
ひとつひとつの星が倍以上の大きさに見え、雫となってこぼれおちてくるように思いました。天の川は白く濃く流れ白鳥座もこと座もどれがどの星だかわからないほどでした。
空気が澄み切っているせいか地平線までも星の鮮明さは変わらず、南の果てにさそり座の頭らしきものをみつけたときは興奮してしまいました。

 山の仲間はやはり歌と酒です。
当然お盆に御銚子、おちょこを持って行っており天然湯酒、星見酒でありました。 
いつもは手を叩いてうるさく歌う山男たちですが、なんとなく「遠き山に陽は落ちて・・」などというしみじみ系を歌ったものでした。

 次回からは、この山岳診療班の活躍を少し綴ってみましょう。
でも、今年はこれでおしまいです。みなさま、是非よいお年をお迎えください。
元気で来年も倉田先生に会いに来てくださいね!

つ・づ・く